論文読みゼミ

先週のを紹介し忘れてた.

  • Burt, Ghrist, Myatt, Holland, Cornell, and Wieman, Coherence, Correlations, and Collisions: What One Learns about Bose-Einstein Condensates from Their Decay, PRL 79, 337–-

Aさんが担当だったのだが,なんか詳しく聞いてはいないがAさんは卒研で素粒子実験から量子光学に移ったそうで(謎)コヒーレンスなどについてすらすらと話が進んでいた.

いわゆる "identical" な粒子の系では組み合わせ論的に3粒子が同じ位置を占める確率が増えるために(g^3 (0) = 3! らしい?),三体衝突(粒子が3つ同時にぶつかる)の割合が増す.三体衝突はエネルギーのやりとりがけっこう複雑で,トラップの予期しないエネルギー状態になったりするので,トラップから粒子が抜けてしまう.よって減り具合を計ると三体衝突のレートが分かる(ただし他の雑多な減少要因を評価しないとならない).んで,BECにおいては大多数が基底状態になって区別つかないため,まさに "identical" な粒子の系となり,MB分布する原子ガスより減り具合が激しい.
うーんストーリーは楽々頭に入ったのだが,やはり基本的なところで分からないところがけっこう残った.動いてる粒子(波束)のあれこれと,時間依存しないSchroedinger方程式の引数の入れ替えとは,naiveに関連付けることはできないだろう.それと三体衝突のレートはどう表されるのだろう? 二体衝突と違って円柱を考えるだけではだめだ.
あと実験ぽい話として挙がったのは,ノイズのあるレーザーのコヒーレンスはどうなるのか.コヒーレンス時間を無限大に飛ばすと理想レーザーになるはずだが,t=0ではどうなるのか.量子光学の教科書を読み進めなければ...
今週のやつは例のアレだ.

原子核の理論屋さんが1950年代に一般論を提唱し,冷却原子にも適用できることが予言されていたFeshbach共鳴を,初めて実験的に実現した.今では冷却原子の実験の基本的なツールとなっている.

散乱理論で言うs波散乱の散乱長を磁場で自由に変えられる現象.正の散乱長は反発力に,負の散乱長は引力に対応するが,詳しいことは↓の講義ノートにゆずる.

もちろん散乱長そのものをダイレクトに観察した訳ではなく,rms速度の5乗に比例するらしいので,その変化をTOF: Time of Flight (急に束縛ポテンシャルを切って自由に拡散させる)によって観察した.
First authorによれば(笑),論文にはならないところで(ポテンシャルの形の安定化)非常に苦労したらしい.あとそこの研究室の作った実験装置が「そうなっていたからそうした」というような話とか.うむ,実験装置は何もかもを自分の好みに応じていじることはできないからなぁ.最後に受理の日付に関するエピソードなどを.