これも いきものの サガか(2)

まぁこれは,そんなに酷い出来でもないかな.

1, 2問目はどうでもいいんだが3問目は異常に負担が多く,ナニコレという感じ.研究室のF君から教えてもらった,その問題のネタ元であるBraunstein and Kimble, Teleportation of Continuous Quantum Variables, PRL 80, 869 (1998)の前半の解説になっている.
量子系に対する擬似確率分布関数の一種Wigner関数を主役にした量子力学の体系を構築することができて,しばしば "quantum mechanics in phase space" 等と呼ばれる.しかしSchroedinger形式やHeisenberg形式を完全に置き換えるには至りそうもない.と言うのも任意のunitary変換で結ばれた状態それぞれのWigner関数は一般には簡潔な関係を持たないからだ.実際,時間発展は
\partial_t W(x,p) = \left.\frac{2}{\hbar}\sin\left[\frac{\hbar}{2}\left(\partial_{x1}\partial_{p2}-\partial_{x2}\partial_{p1}\right)\right] H(x_1,p_1) W(x_2,p_2)\right|_{x_1=x_2=x,p_1=p_2=p}
という妙な式で記述される.(この辺はHillery, O'Connell, Scully, and Wigner, Distribution Functions in Physics: Fundamentals, Phys. Rep. 106, 121 (1984)やLee, Theory and Application of the Quantum Phase-space Distribution Functions, Phys. Rep. 259, 147 (1995)にいくらでも詳しく書いてある.)
しかし量子光学で現れるいくつかのunitary変換については都合よいことにWigner関数同士も変数変換で結ばれる(例えばBarnett, Methods in Theoretical Quantum Optics, OUP, p. 122*1).そのような性質を利用しつつ,Braunstein-Kimbleはパラメタrのsqueezed vacuumから作ったEPR対を利用した量子teleportationが「入力状態のWigner関数を分散exp(-2r)のGaussianで畳み込む」という簡潔な操作に対応しているという驚きの事実を述べている(r→∞で畳み込みは恒等変換となる). ...等を,式を追って(Gauss積分ばかり)解説したのだが,やはり変数変換周りが色々怪しくて,具体的には積分の変数変換で余分な因子-1だの1/εだのが付いてしまった.その辺りは適当な表現でごまかしてある.特に最後,EPR対のBobのmodeのdisplacementはBraunstein-Kimbleでは抽象的に書いてあるが 古澤,量子光学と量子情報科学数理工学社 ではあくまで実験系ベースで,変調した光とのbeam splitterによる重ね合わせで説明されている.その重ね合わせで導入されたmodeに関してGauss積分したら符号どころか1/ε(→∞)が付いて,さすがにこれは規格化を崩すのでけっこう困った.