さきがけライブ2005

日比谷に行ったのはこいつのため.北大理・生物,生体高分子設計学講座のゴン先生がポスター発表にいらっしゃるというのでチームのMくんと一緒に行ってきた.

...当研究室では、生命体がなぜそのような含水軟組織(Soft & Wet Matter)を生命活動の場としたのか?そして階層構造における創発性はどのように誘発するのか?といった難解な疑問に取り組んでいます。その例を挙げると、なぜ軟骨のような生体組織の表面摩擦は固体の百分の一しかないのか?なぜ筋肉はあれ程の力をいっせいに生み出すことができるのか?なぜ細胞は細胞外マトリックスがなければ生きていけないのか?といった問題があります。

我々はこのような疑問を物理的、化学的、生物的なアプローチを統合的に用いながら、分子レベルからマクロレベルまでの広い空間スケールを横断的に研究し、これらの知見を人工軟組織(丈夫で低摩擦な人工軟骨や人工筋肉、人工細胞、人工血管、さらには再生医療用のマトリクスなど)の開発に役立てようとしています。

ただ,大学と企業のプロ研究者の情報交換の場という雰囲気で,入れ替わり立ち替わり人が来るので,研究の概要紹介を超える話までは聞くことができなかった.向こうも我々のバックグラウンドとか分からないから話すにしても難しいだろうし,まぁ仕方ないのだけどね.それに行く前は「来るのはどうせ学生,それも何人か来るんじゃない? だったら実験のあれこれを尋ねるのも気安いよね」と思ってたのだが,いらしてたのはゴン先生ご本人,他にはM1の方1人だけでそちらも質疑応答に忙しそうで,ヒマそうな学生は残念ながらいなかった.本当は微に入り細をうがった話がしたかったのだが... 単に「教えて君」でしかない我々が長居できる雰囲気ではなかったので,10分ほどで撤退.1月に山上会館で会議があるそうだからそこを捕まえようか?
しょうがない他のところ眺めて帰ろう,となって,駒場1年のころ私が力学の講義を受けた深津先生がいらしてたので,そこにとりあえず行ってみた.そうしたら元々しゃべりはうまい先生だったのだけど,シリコンからレーザーを出す研究について何ともまぁ丁寧に説明を受けてしまって(我々のレベルを鑑みて固体物理の基礎から語り起こすのだ),40分くらい? その間ひたすらしゃべり続ける深津先生.圧倒された.ブースにはけっこう人が見に来てたのだが,先生はそちらより我々を優先なさって話を続けるので,何か申し訳ないような... 最後はブースに来た人が深津先生に説明を求めたのでそこで終わりになったが,まだいくらでも続きそうだった.

...種類の違う半導体を組み合わせたものではどうでしょうか。このようなシステムをへテロ系と呼びますが、実は、今迄には知られていなかったような様々な面白い現象が現われるのです。現在、世界ではこのへテロ系の物性に興味が集まっており、とくに原子レベルの大きさしかない、量子ナノ構造とよばれる微小構造における物性が話題の中心です。...

我々の研究室では、このような量子ナノ構造を対象に、新奇な物性、量子効果の探索を行っています。ところで、こうした量子構造を実現するには、原子の動き、配列をコントロールし、原子層を一層ずつ正確に積み上げたり、原子を紐のように整列させたり、数百原子でできた量子ドットとよばれるような構造をうまく作れることが必要です。...

現在は、量子ナノ構造を使った間接遷移半導体の光学遷移則変換を目指しています。これによれば、エレクトロニクスの分野でしか使えないと思われてきたSiを、光学的な分野でも活躍できるスターに変身させることができるかもしれません。

あぁそうそう,なんと深津先生は物工卒らしい.84年つーと私の生まれた年だ... 特に同胞意識はないけど,ほぼ共通のバックグラウンドを持ってるとなるとやはり話が通じやすいものかな? 柏について:「物性研って都落ちに思えますけど,あそこはすばらしい環境ですよ」そんな感じの雑談も伺って,我々としてはとても楽しかった.
量子ドットと言えば前学科長にして感電体験者のI先生(やはり物工卒)も量子ドットだったな.Mくんは東芝の研究所見学に昨日行ったばかりだそうだが,引率がI先生で,懇親会ではにこやかな顔で毒を吐いていたらしい:「物工の教授陣は世界一ですよ.学生はどうか知りませんが」うわあああぁぁぁあ気にしてたこと言われちゃってるよぉぉぃ! すいませんすいませんすいません

間接遷移型IV族半導体ナノドットにおいては、波数保存則の緩和、無欠陥ナノ結晶中へのキャリアーの局在化や発光性界面準位の形成により、発光/受光効率の大幅な増大が期待できる。このためIV族半導体ナノドットの研究は盛んに行われている。

... 光効率の大きな素子あるいはレーザーを開発できれば、Si光素子とSi電子素子の融合が可能となる。当研究室の研究は21世紀の高度情報処理・通信の発展に大きく貢献できるものと考えている。

そんなことだけ書くとアレだけど,2年冬の統計熱力学の講義はけっこう丁寧だったし(あまり聞いてなかったけど... すいませんすい(略),訪ねて2年生の学習進度について相談したときも丁寧に応対してくれたし,よい先生です.企業にいた頃 STMを手作りしたってのもすごい話だ.