数学のご利益

最近,関数解析を学ぼうという意欲がだいぶ下がってしまった... Heine-BorelとかBolzano-WeierstrassとかHilbert-SchmidtとかRiesz-FisherとかHahn-Banachとか*1,空間の性質のわずかな違いから点列や作用素の振る舞いがどう制限されどう変わるかというのはそれなりに興味を惹きはする.また無限次元空間*2では,「だいたい等しくなる」ことの数学的洗練である収束に関して,ノルムの性質から色々奇妙なことが起きる*3と教えてくれたのは確かだ.関数のクラスのとり方がクリティカルになる例も,微分方程式の解の存在を云々するときにはそれなりに目立つものが出てくる*4.しかし普通に物理をやってる分にはあまり有難味がない.例えば極端なことを言えば,そもそも開集合と開でない集合と,別に区別しなくていいじゃん,とか(笑).要するに,深いところまで突っ込まない限りは,やっていいことといけないことを見分ける技術に過ぎないのよね.
その点,多様体とかあのへんの解析学は,できなかったことをできるようにしてくれるのでとてもうれしい.つかみ所のない曲面が,適当な性質さえ満たしていれば(滑らかであれば)局所的にEuclid空間と同一視でき,微分やら接vectorやらを考えることができ,しかもそこには群や環が隠れているが,それらを行列で表現する方法は確立されているので扱いやすいことこの上ないし,expに乗っければ見事な対応もつけられる(長っ).またLaplace-Beltrami演算子とかはかなり一般的だが具体性を失ってはおらず,それどころか球関数などのゴチャゴチャっとした存在に新たな意味付けをすることにもつながる.まぁRiemann幾何にはちょっとアレ過ぎて及び腰になっちゃうんだけど...

*1:人名2つがつく定理を集めてみました.

*2:量子力学を展開する土台として使うことも多い.

*3:作用素の弱収束(適当な基底における行列要素の収束)が強収束(作用素そのものの収束,つまり任意の元に対する作用の結果の収束)を意味しないとか.

*4:1次元波動方程式を解いて得た解はまっすぐに伝播するので,初期条件が穏やかでも,重ね合わせと分散によって,あるとき突然に不連続な形が生じるかもしれない(衝撃波解).