太鼓の形が聴けるか?

「太鼓の形が聴けるか?」とは面白い言葉だ.「逆問題」と総称される分野で引合いに出される標語.太鼓の形を与えられたとき音を算出するのが普通の(順)問題だが,それに対し,太鼓の音を聴いて,その音を出し得る太鼓の形を推定するのが逆問題(の典型例).Weylが1910年代に音(というかスペクトル)から太鼓の面積を求められるという定理を得たそうだが,Kacが1966年に論文 "Can One Hear the Shape of a Drum?" で取り上げて以来,キャッチーなタイトルと相俟ってホットなテーマになったんだそうな.
こういう話は聞いてて面白い.日常語で容易に説明できる問題でありながら,含んでいる学術的内容は深い.これで数学がもっと分かったら,上っ面の解説だけでなく問題そのものの中身を理解できるはずなんだが...(図書館にもちゃんと本があったし) 今の私には「Newton」「日経サイエンス」レベルの「理解」が精一杯だ.精進精進.とまぁそれはともかく,こういう問題を自分でもいずれ見つけたいものだ.
なお91年にGordon, Webb, Wolpertが2次元の太鼓で音が等しいペアを見つけたらしい(つまり完全に「形を聴き分ける」ことは不可能).