「理解する」

どうやれば教科書に書いてあるような概念/手法が「理解できる」んだろう.
現在の自分が... そうだな,例えば2次関数のグラフの頂点を求める方法を「理解している」のは間違いない.
ではHermite行列Aがユニタリ行列UでU^{-1}AUと対角化できることを,それと同様に「理解している」だろうか.線形代数の教科書には証明が載っていて,その概略を思い出すことはできるが,多分2次関数並には「理解して」ない.ではそうする必要があるだろうか.例えば量子力学でその事実が果たす役割のことを考慮すれば,2次関数並に「理解する」すべきと言えるかもしれない.
今後私が習得しなければならない概念/手法はどんどん高度化していく.Euler, Gaussの子孫ならぬ平凡な一学生は ---棒高跳びの選手が高い高い棒にチャレンジし,ある高さで力及ばず足を引っかけるように--- 難しい概念を勉強し終ったらさらに難しい概念にチャレンジし,あるところで自分の理解力の上限を察して諦め,その後はそこまでの記録のホルダーとして生きていく,そういう宿命なんだろうか.
多分答えは一意に定まらないんだろうけど,それでもいかにして「理解」に近付くかという欲求は心に留めておきたい.
なお上の話はあながち極端なものではなくて... こういう逸話がある:「数学者というのはどういう人間か知っているかね? \int_{-\infty}^\infty \exp(-x^2)dx = \sqrt{\pi}が1+1=2と同じ位自明に思える人間のことだ.Liouvilleは数学者だった」(Kelvin卿)