物工輪講発表:41K原子のFeshbach共鳴

前にも書いたかもしれないが物工輪講の同級生の発表は今まで(座長だったときを含め)2回しか聴きに行ってない.それでも一応自分の発表はきちんと準備しておきたいと思っていた.
そんなこんなで本番を迎えたのだが,押さえるべき点は一応 押さえて話ができたように思う.しかし分子のHamiltonianの理解がまだ浅いし角運動量関連の複雑な記法/規則をさっぱり把握してない点と,過去に海外の様々な研究室で達成された分子BECもしくは極低温分子の生成についてほとんど知識がない点が,今後の課題として残っている.
一つだけちょっと失敗だったのは,分子状態の寿命は如何程かと質問を受け,「いわゆるトンネル効果による2次摂動だと説明したように分子状態は仮想的な状態に過ぎず,その寿命は非常に短いだろうがよく知らない」等と答えたのだが,これは相手の求めているものとは違った.私はFeshbach共鳴の衝突過程に及ぼす影響が頭にあり(と言うのも,現在の装置のセットアップで調べられるのは原子数のロスの増加に過ぎず,これは衝突過程が影響を受けて散乱長が正/負の無限大に発散することによるので)そこでの分子状態はBreit-Wignerの共鳴公式*1で言うようなものでしかないからだ.しかしトークの冒頭で研究の動機として「Feshbach共鳴により原子2個を貼り合わせて分子を作る」と紹介しており,そちらの方で生成された分子の寿命についての質問だったのだ... と工9号館への帰り道で理解した.質問を下さった方の質問がやや誤解を招く表現だったことが3割,私が適切に汲み取るべきところを汲み取れなかったのが7割というところか.そちらの方向でFeshbach共鳴を応用する際には外部磁場を断熱的に(=ゆっくりと)掃引し,断熱変化として原子2個を分子に変換する.その効率はほぼ100 %であり生成された分子の寿命は(掃引後ではそちらが固有状態なので)基本的に無限大である(もちろん,実験においては真空槽内の雑多な粒子による散乱のために数十msとかの寿命にしかならないだろう.しかしそれはFeshbach共鳴の物理の外にある理由である).

*1:http://www.astro.uwo.ca/~jlandstr/p467/lec9-nucl_reacts/ この辺が参考になる? 原子核の人の書いたものだけど.