散財三唱,さんざーい,さんざーい,さんざーい...

生協書籍部に久々に寄ったところ,気楽に読める啓蒙書を見つけたので買ってみた.

まえがき

原子よりさらに小さい超ミクロの世界は「量子の世界」とも呼ばれる。量子とは,原子核を構成する陽子と中性子,電子などの総称だ。光も量子の一種で光子ともいう。量子の最も不思議な点は粒子と波の性質を併せ持つこと。...

こうした量子の不思議な振る舞いを説明するのが20世紀前半に確立された量子力学だ。... 私たちは電子1個を制御でき,光子1個を操れるようなった。そして,量子力学が生んだこのような先端技術をベースとする新たな学問領域と産業が誕生した。それが量子情報科学であり,量子情報産業だ。本書は量子情報科学の最前線を紹介するとともに,その研究成果を生かすことで社会がどう変わるかを展望する。

第1章「不思議な量子」は量子情報科学の入門編。... 「エヴェレットの多世界」は量子力学にまったく新たな解釈をもたらした天才科学者エヴェレットの話。「量子テレポーテーション」は量子計算において「重ね合わせ」と並ぶ重要概念「量子もつれ」に関する実験の話で,SF小説のような味わいもある。アインシュタイン量子力学に批判的だったが「やっぱり神はサイコロを振らない」を読むと,彼の批判は量子力学の本質を突いていたことがわかる。「やってみよう! “量子消しゴム”実験」は,自分の手を動かして量子力学の不思議さを実感できる手引きとなる。

第2章「量子コンピューターへの道」は「重ね合わせ」と「量子もつれ」を使って実現する夢の計算機,量子コンピューターがテーマ。「多世界から生まれた計算機」は量子コンピューター誕生譚。... 現在,有望視されているのが電子のスピンの向きの違いを0と1に見立てて量子計算する手法。「スピントロニクス 電子技術を飛躍させる新戦略」はその総説で,「ダイヤモンドで実現するスピントロニクス」はダイヤモンド中の電子のスピンを操る技術に焦点をあてる。「トポロジカル量子コンピュータ」はスピンを使わないまったく別のアプローチで量子コンピューターを実現しようという話だ。

第3章「量子暗号をつくる」では量子コンピューターと並ぶ量子情報科学のメインテーマである量子暗号をとりあげる。... 「実用段階に入った量子暗号」は欧米のハイテクベンチャーによる商業化のレポート。... 「量子暗号は三度“発明”された」では,長く続いた夜明け前の時代が活写されている。

第4章「ボース・アインシュタイン凝縮を生かす」もホットなテーマだ。... 「ボース・アインシュタイン凝縮の実現」は,表題の業績でノーベル物理学賞を2001年に受賞した2人の著者によるBECの総説。「宇宙で最も冷たいガスを操る」は原子レーザーなどBECが秘めたさまざまな可能性をわかりやすく紹介する。BEC実現には大がかりな装置が必要だったが,「チップ上に原子の雲を生み出す」を読むと劇的な小型化は十分可能なようだ。「凍りついた光」はBECで光をほぼ止めてしまう話で,データ貯蔵や量子コンピューターなどへの展開が期待できるという。

... この啓蒙書は,ノーベル賞関係を含む新規なトピックスから重要かつ分かりやすいものを選んで解説することにより,物質科学の面白さ,驚き,夢を読者に伝えることを第一の目的としています.大学の1,2年生程度の予備知識で十分に読めるように平易に記述する一方で,最先端研究の一端まで理解できるように工夫し,若い読者が工学,理学を問わず,この分野に進むきっかけとなることを期待しています.

1章
冷却光線の話――レーザー冷却とボース―アインシュタイン凝縮 久我隆弘
2章
100兆分の1秒の瞬間写真――超高速レーザー分光 末元徹
3章
物質表面の地形を測る――トンネル顕微鏡で見える原子と電子 小森文夫
4章
コンピュータの中に物質をつくる――シミュレーションを使った理論物質科学 常行真司
5章
ナノの世界で物質を組み立てる――人工超格子と2次元電子系 家泰弘
6章
電子1個を操る――量子ドットと人工原子 勝本信吾
7章
電子が運ぶミクロな磁石――スピントロニクス 大谷義近
8章
カーボンナノチューブニュートリノ――物質中の相対論的粒子 安藤恒也
9章
見果てぬ夢,室温超伝導――酸化物高温超伝導の展望 広井善二
10章
実験室でつくる地球深部――100万気圧のもとで生み出される多彩な新物質 八木健彦
11章
有機物で築くエレクトロニクス――有機電子デバイス有機ELディスプレー 森健彦
12章
分子の紐でつくるソフトマターの世界――超高強度先端材料から生体材料まで 柴山充弘
エピローグ
発展する物質科学 福山秀敏

それなりに楽しめる内容になっているようだ.一通り眺め終えたら居室にでもなげうっておこう.
また ビューティフル・コード,オライリー も買ってしまった...(多分読む暇はない