LinuxからiTunes Music Store

↑で触れたGTKPodはあくまでもiPodを制御するだけで,iTunesのもう一つの主要機能であるiTunes Music Storeへのアクセスには対応していない.しかしiTMSiTunes以外にアクセス手段を提供していないので,iPod(とGTKPod)だけあっても,楽曲はCDから(grip & 午後のこ〜だ等によって)抜き出すしかなく,そこそこ便利な携帯音楽プレイヤーとしてしか使えない(まぁ昨日までは一般的なiPodユーザもそうだったんだけど).iTMSにアクセスして楽曲を買ってくるためのソフトが必要になる.海外のiTMSについてはSharpMusiqueが解決策になる.
http://www.nanocrew.net/?page_id=63 SharpMusique
Pythonで書かれたPyMusiqueC#(と言うよりMono)に移植する形で開発されたこのソフトは,リバースエンジニアリングによってiTunesの使う非公開のプロトコル*1を喋れる.iTMSにとってはApple純正のiTunesと区別が付かないという訳だ.作者はDVDの暗号化を破るソフトDeCSSの開発で一躍有名になったノルウェー人J. L. Johansen氏*2ノルウェーの法体系がその類の行為に寛容(と言うか,企業よりも個人寄り)なのもさることながら,やはりJohansen氏の「フェアユース」にかける情熱が大きいと言える.彼が言うには「SharpMusiqueを使えばWindowsMacOS Xを持ってないLinuxユーザでもiTMSに接続して楽曲が買えるようになる.客を増やしてやってるんだからAppleはゴタゴタ文句を抜かすな」と.
ちなみにSharpMusiqueには副作用(?)があって,iTunesでダウンロードした楽曲にはコピーの回数に制限がかけられる(いわゆるDRM).しかしそれはiTunesがダウンロードしたにやっていることなので,SharpMusiqueはそれを行わない.つまりSharpMusiqueを使えばコピーし放題な楽曲ファイルが手に入ることになる.これは「悪用につながる!」としてAppleはいい顔をしないだろうけど,Johansen氏は「ユーザを信頼すべし! ユーザがコピーしたいだけコピーできるのは当然の権利だ」という立場に立っている模様.しかしこれはiTMSから金を払わずに楽曲をかっぱらってくるような泥棒行為とは全く別のことなので注意.
うだうだと述べたが,さてではSharpMusiqueを使えば開店間もないiTMS日本から音楽を買えるかと言うとそうではない.国別のコードみたいなのがあるようだが((sharpmusique-0.3.1/FairStore.cs:1353 を参照.)),SharpMusiqueiTMS日本のコードを知らないのでiTMS日本にアクセスできない.しかしそれはApple純正のiTunesを手持ちのPCで利用できる人ならちょっとパケットをキャプチャすれば調べられるだろうから,他の変更点がないならすぐにSharpMusiqueは対応することだろう.

*1:HTTP上のプロトコルで,簡単な暗号化を行っている.この暗号化はPyMusiqueを封じ込めるためにAppleが導入したものだが,作者Johansen氏はたちどころに改訂版をリリースしてこれに対応した.詳しくは iTunesのDRMをめぐって - faireal.net を参照のこと.

*2:ちなみに私より1つ年上.彼のblogの自己紹介 http://nanocrew.net/?page_id=60 によればDeCSSの開発当時は15歳,その翌年に高校を退学したとのこと.その後DeCSSの開発を罪に問われて起訴されたが無罪になった.