田中耕一氏の元上司のwebサイト

ノーベル賞田中耕一氏の元上司(質量分析計開発チーム)の個人的なwebサイトをふと見つけた*1.この喜利元貞氏は京大の電子を出てずっと島津のエンジニアとして勤めていらした方らしい.

島津製作所の中央研究所で毎週開かれていたらしい研究報告セミナーに提出された,例の実験ミスから得たブレークスルーに関するレポートの一部が載ってる.TOF-MSってのはTime-of-Flight Mass Spectrometer (イオン化した分子の飛行時間に基づく質量分析計)の略ですな.
やっと開発したTOF-MS,すなわち「タンパク質の分析で重要な質量を,あっと言う間に決定できる画期的装置」が開発当初は全く売れなかった話:

「分子量はだいじな情報だから、精製したタンパク質ができたときには、分子量を、ていねいにはかりますよ。測定を間違えたら、精製した一カ月の苦労がだいなしですからね。慣れた方法で、ていねいに測ります。一日がかりですが、一カ月に1回の仕事だから、たいした負担じゃない。」
「慣れない質量分析装置を、一カ月に1回、運転する方がたいへんですよ。機械って、うまく動かなかったら、訳が分からなくなって、お手上げですからね。だいじな試料を知らない機械に預ける気にはなりませんよ」
「ま、もっと様子をみますよ。他の人が使わない間は、こちらだって急ぐことはない。今までのやり方で進んでいるのだから」

これは厳しいっすね... (多分,今ではユーザである高分子屋の方でも「質量分析はあっという間に済む」ことを前提とした研究プランが当たり前のように採用されているのだろう.そうやって使い方が固まってしまえば「なくてはならない品物」となるんだろうけど...)